訪問歯科って何?訪問歯科でできることとは

寝たきりの方など、歯科治療を受けたくても、歯科医院に足を運べない方のために、自宅で歯科治療を受けられる方法があります。
自宅で行う歯科治療を「訪問歯科」と言います。
今回は、訪問歯科とは何か、また訪問歯科でできる治療はどんな治療があるのか、詳しく解説していきます。
訪問歯科とは?
訪問歯科は、持病などで通院が困難な方を対象に、歯科医師や歯科衛生士が自宅を訪問して歯科治療を行うことです。
専用のポータブル機器や治療器具を自宅に持ち込んで治療を行います。
歯科治療や専門的な口腔ケアを受けることができ、歯科医院に通院できない方もお口の健康を保つことができます。
保険診療内で受けることができますが、歯科医院から自宅への距離や、通院困難者として認められることなど、いくつかの決まりがあります。
訪問歯科を希望する場合には、まずは歯科医院にお問い合わせください。
訪問歯科で可能な治療

自宅で治療をするというと、「大した歯科治療はできないのではないか」と心配になる方もいるかもしれません。
しかし心配入りません。ポータブルタイプの歯科治療機器がありますので、訪問歯科診療でも、多くの歯科治療を受けることができます。
訪問歯科で可能な治療を紹介します。
虫歯の治療
歯科医院で行う治療とほぼ同程度の治療が可能です。
歯を削るタービンや、バキュームと言われる唾液や水を吸引する器具にも、ポータブルタイプがあります。
虫歯部分を削り、修復する治療を行います。その歯で詰めるレジン充填のほか、型取りをして、後日詰め物や被せ物を装着することも可能です。
ただし、身体状況などによっては、長時間同じ姿勢を維持することが難しい場合や、水を口の中に溜めておくことが難しい場合などがあるでしょう。
その方のお身体の状態をみながら、できる治療を行います。
入れ歯の調整や作製
しっかり噛めるお口の状態にすることは、全身の健康を保つ上でもとても重要です。
合わない入れ歯を使い続けていると、不快感が強くなり、食事がしづらくなることもあるでしょう。栄養状態にも悪影響を及ぼすことがあります。
訪問歯科では、入れ歯の調整や作製が可能です。
入れ歯を削合する機器は、自宅に持っていくことが可能ですが、入れ歯の修理など大掛かりな調整が必要な場合には。一旦入れ歯をお預かりして、作業させていただくこともあります。
歯周病の治療
歯周病は進行すると歯を失う原因になります。ご自宅で療養している方にとっても、「しっかり食べられる」というのはとても重要なことです。
歯周病から歯を守り、できるだけご自身の歯で食事を続けていただくことで、しっかりと食べ物を咀嚼し、栄養をとることができます。
歯周病の治療に必要な歯石除去も、自宅で受けることができます。
嚥下リハビリテーション
「食べる」「飲み込む」といった口の機能がしっかりと働くよう、嚥下(飲み込み)のリハビリを行います。
嚥下に関わる舌や咽頭の筋肉を強化するトレーニングや、唾液の分泌を促すマッサージを行います。
飲み込むことが難しくなると、食事が楽しめなくなったり、食べるのに疲れてしまったりすることがあります。また誤嚥や窒息を招くこともあります。
命に関わることもありますので、嚥下機能の衰えを防ぐために、嚥下リハビリテーションを受けるのは効果的です。
専門的口腔ケア

歯科衛生士がお口の中の専門的なケアを行います。歯ブラシやガーゼを使った清掃から、専用の機械を使った清掃まで行うことができます。
お口の中の衛生を保つことで、「誤嚥性肺炎」を予防することができます。誤嚥性肺炎とは。死亡原因にもなる疾患です。お口の中で繁殖した細菌が、唾液などと一緒に、肺に入り込んでしまうことで起こります。
通常は、飲み込んだものは、食道を通って胃に運ばれるので問題になりませんが、嚥下機能の低下により誤って気管・肺に入り込んでしまうことが問題です。
そこで免疫力が低下していると、誤嚥した細菌によって肺炎を発症する「誤嚥性肺炎」になってしまうのです。
訪問歯科では、専門的な口腔ケアのほか、介護者の方にも、お口のケア方法や入れ歯の取り扱いについて、ご説明させていただきます。
訪問歯科の対象になる人
訪問歯科は、誰でも受けられるわけでは無く、歯科医院への通院が難しい方が対象になります。内科など、他の診療科を受診できている場合には、通院困難者として認められず、訪問歯科の対象にならないことがあります。
対象となるのは次のような人です。
- 要介護認定を受けている方
- 寝たきりの方
- 身体が不自由な方 など
要介護認定を受けていなくても、身体的・精神的に疾患があり、通院が困難な場合は、訪問歯科の対象になります。
ただし保険診療内で訪問歯科を受ける場合には、訪問歯科を担う歯科医院から半径16キロ以内までが、訪問歯科の範囲内になっています。
またご自宅など患者様が寝泊まりをしているところへ、訪問をする決まりになっていますので、デイサービスなどの一時利用施設へ歯科医師が出向くことはできません。
歯科や口腔外科のある病院に入院している場合も、訪問歯科の対象になりません
保険診療内で訪問歯科を受診する場合には、細かな決まりがあるため、希望する場合には歯科医院にお問い合わせください。
歯科医院に通えないご家族がいるなど、通院が難しい方の治療でお悩みの方は、ぜひご相談ください。
なぎ歯科クリニック大島 院長 杉本義樹