インプラントは一生もつ?耐用年数と長持ちさせる秘訣

インプラントは、失った歯を補う治療の中でとても優れた方法です。見た目や噛み心地も天然の歯に近く、入れ歯のように外れる不安もなく、生活の質を大きく高めてくれます。
「インプラントは一生もの」と耳にすることもあるかもしれません。
しかし実際は、インプラントの寿命は、人によって大きく変わります。
「一生もつかどうか」は、治療後のケアや生活習慣に大きく左右されます。
今回は、インプラントの耐用年数と長持ちさせる秘訣について詳しく解説します。
インプラントの耐用年数はどのくらい?
インプラントの人工歯根はチタン製で、とても丈夫です。生体親和性が高く、骨としっかり結合する特性があり耐久性は非常に優れています。
正しく機能すれば10年以上、場合によっては20年以上維持できると言われています。
実際に20年以上、インプラントを使用し続けている患者様もいらっしゃいます。
データに見るインプラントの寿命
国内外のデータでは、10年後の生存率は90%以上、20年後でも80%前後と報告されています。例えば、インプラントメーカーのストローマン社のデータでは、10年間の生存率は 98.8%という報告がされています。
インプラントは、他の補綴治療(入れ歯やブリッジ)と比較しても長期的に安定しやすいことが分かります。
ただし、これらのデータの数値は「適切なケアを行った場合」に限られます。
適切なケアを続けられなかった場合には、インプラントの寿命が短くなってしまう可能性があります。
「一生もつ」とはどういう意味?
インプラントは「半永久的に使える可能性がある治療法」ですが、必ずしも一生保証されるわけではありません。
お口の環境は年齢とともに変化します。顎の骨や歯ぐきの状態、全身の健康状態も影響します。インプラントの装置自体は一生もつほどの丈夫さがありますが、インプラントの寿命は装置自体の寿命ではなく、周囲の環境によって左右されるものです。
長持ちさせるために大切なポイント

インプラントをできるだけ長持ちさせて、寿命を延ばすためのポイントを詳しく解説します。
毎日の丁寧なセルフケア
天然の歯と同じように、インプラントも清掃が欠かせません。
歯ブラシでのブラッシングはもちろん、デンタルフロスや歯間ブラシを使い、歯と歯の間やインプラント周囲の汚れをしっかり取り除きましょう。
特にインプラントと歯ぐきの境目は汚れが残りやすく、そこから炎症が広がるリスクがあります。毎日丁寧にケアをする習慣を身につけることで寿命が大きく変わります。
定期的にメンテナンスを受ける

歯科医院での定期的なチェックとクリーニングは、インプラントを長持ちさせるのにとても大切なポイントです。
専用の器具でのクリーニングにより、毎日のケアでは除去しきれない汚れもしっかり取り除くことができます。
また、歯科医師による定期チェックで、早期にトラブルを発見することができます。
定期チェックでは、インプラント周囲炎の有無や、噛み合わせの状態、レントゲン写真による確認などを行います。
生活習慣を見直す
インプラントを長く使い続けるためには、毎日の生活習慣が大きく影響します。
禁煙
タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素は血流を悪化させ、インプラントを支える骨の治癒や再生を妨げます。その結果、インプラントと骨がしっかり結合せず、早期に脱落してしまうリスクが高まります。
禁煙をするだけで、インプラント治療自体の成功率が上がり、またインプラントの寿命を延ばせることがわかっています。
歯ぎしり・食いしばり
天然の歯には、歯と顎の骨を結びつけ、クッションのような役割をする「歯根膜」がありますが、インプラントにはありません。そのため、強い力を受けるとダメージを直接骨に伝えてしまいます。
歯ぎしりや食いしばりがある方は、知らない間にインプラントへ過剰な負荷がかかり、骨の吸収やインプラント自体の破損を引き起こす可能性があります。
歯科医院で作製するマウスピース(ナイトガード)を使用すると、インプラントにかかる力を分散させ、負担を大きく軽減することができます。
定期チェックの際にマウスピースが必要だと判断された場合には、マウスピースを作製し、使用するのがおすすめです。
食習慣
インプラントは、天然の歯と同じように、何でも食べることができます。
しかし、普段から極端に固いものを噛む習慣がある場合には、見直した方が良いです。
氷や硬いスルメ、ナッツ類などを日常的に噛むことは、インプラントへの負担を増やす原因になります。柔らかい食品を選んで食べる必要はありませんが、「極端に固いものは控えめにすること」を少し意識してみましょう。
インプラントが長持ちしない原因
インプラントが長持ちしないのには、お口の中の環境や全身の健康状態など、さまざまな要因が関係しています。その中でも代表的なものを詳しく見ていきましょう。
インプラント周囲炎
最も大きなリスクが「インプラント周囲炎」です。これは天然歯でいうところの歯周病で、インプラントの周囲が歯周病菌に感染して、炎症が起こるものです。
進行すると、インプラントの周りの骨や歯ぐきが破壊されていきます。症状や進行の仕方は歯周病と似ていますが、インプラントは抵抗力が弱いため進行が早く、気づいたときには大きな骨吸収が起きていることもあります。
初期には痛みや腫れなどの自覚症状がほとんどなく、歯科医院での定期チェックでしか発見できないことも多いので、定期的にメンテナンスを受けることがとても重要です。
インプラント周囲炎が進行すると、「歯ぐきからの出血」「膿が出る」などの症状が起こり、インプラント自体もグラグラと動くようになります。最悪の場合は撤去せざるを得なくなります。
インプラント周囲炎の予防のためには、毎日のセルフケアに加えて、歯科医院のメンテナンスが欠かせません。
噛み合わせの不調和
インプラントは天然歯と違い「歯根膜」が存在しないため、ダイレクトに力が伝わってしまいます。そのため、噛み合わせがわずかに狂っているだけでも、強い力が一点に集中し、インプラントや顎の骨に大きなダメージを与えることがあります。
たとえば、歯ぎしりや食いしばりのある方は、無意識のうちに自分の体重に匹敵するほどの力をかけていることがあります。その力がインプラントに加わり続ければ、骨の吸収やインプラント自体の破損を引き起こすリスクが高まります。
定期的な噛み合わせチェックや、必要に応じてナイトガードを装着することが必要です。
全身の健康状態
糖尿病や高血圧、免疫力の低下など、全身の健康状態はインプラントの寿命に直結します。特に糖尿病は炎症が悪化しやすく、骨の治癒を妨げるため注意が必要です。
インプラントの施術前には、必ず全身の健康状態を確認し、持病がある場合には内科主治医と連携の上治療を進めますが、インプラントの埋入後も、全身の健康管理とあわせてインプラントを維持することが大切です。
メンテナンス不足
インプラント治療を受けた方の中には、治療後、「特に痛みがないから大丈夫」と通院をやめてしまう方がいらっしゃいます。
しかし、インプラントはトラブルがあっても痛みを感じにくいため、異変に気づくのが遅れることがありますので、定期的な通院は必要不可欠です。
メンテナンスでは、歯ぐきの状態や噛み合わせのチェックや、レントゲンによる骨の状態のチェックが行われます。プロの目で早めに異常を見つけ、適切に対応することでインプラントの寿命を大きく延ばすことができます。
まとめ
インプラントは「一生もつ可能性のある治療法」ですが、それは患者様自身の日々の丁寧なケアと、歯科医院でのサポートがあってこそのものです。
毎日のセルフケアと定期的なメンテナンスを続け、生活習慣を整えることで、インプラントは10年、20年、それ以上長持ちさせることができます。
当院でも、インプラントのメンテナンスに力を入れています。
「インプラントを入れたら終わり」ではなく、「入れてからがスタート」という意識でケアを続けていきましょう。インプラントを大切に扱うことは、残っている天然の歯を守ることにもつながります。
なぎ歯科クリニック大島 理事長 杉本義樹