インプラント治療中に気をつけたい生活習慣と食事のポイント

インプラント治療は、歯を失った場合に、人工歯根を顎の骨に埋め込み、自分の歯のようにしっかり噛める状態を取り戻すことができる治療です。
しかし、手術を受けたらすぐにすべてが終わるわけではありません。治療の成功には、手術後の過ごし方や日常生活の工夫が欠かせません。実際に、喫煙や歯磨き不足などの生活習慣が原因でインプラントが脱落したり、周囲の歯ぐきに炎症が起きたりするケースもあります。
今回は、インプラント治療中に気をつけたい生活習慣や、食事での注意点についてわかりやすく解説します。これから治療を受ける方や、現在インプラント治療中の方は、ぜひ参考にしてください。
インプラント治療中、日常生活での注意がなぜ必要?
インプラントは、人工の歯根を顎の骨に埋め込む治療法です。人工歯根と骨との結合には、通常2〜6ヶ月ほどの治癒期間が必要で、その間に無理な力が加わったり、細菌感染が起きたりすると、インプラントがうまく定着せず、やり直しが必要になるケースもあります。
特に術後数日〜数週間は、インプラント周囲の歯ぐきや骨がとてもデリケートな状態です。この時期にどのような生活を送るかが、インプラント治療の成功を左右する大きなポイントとなります。
たとえば、喫煙による血流障害、食事中の強い咀嚼、口の中を清潔に保てない状態などは、インプラントのトラブルを招く原因になります。
このあと、具体的に気をつけたい生活習慣や食事内容について、項目ごとに詳しくご紹介します。
手術後、当日の過ごし方と注意点

インプラント手術を受けた当日は、体に大きな負担がかかった状態です。見た目は元気そうでも、体は回復モードに入っています。無理に動いたり、血流を促進するような行動をとると、血が止まりにくくなったり、腫れや痛みが強くなったりする恐れがあります。
特に注意したいポイントは以下の通りです。
安静にして過ごす
手術当日はなるべく横になってゆっくり過ごし、激しい運動や長時間の外出は控えましょう。激しい運動により血流が良くなると、痛みや腫れが増す可能性があります。
強いうがいをしない
うがいをしすぎると、傷口が塞がりにくくなったり、血が止まりにくくなったりすることがあります。出血が気になることもあるかもしれませんが、極力うがいは控え、軽く口をゆすぐ程度にとどめてください。
飲酒・喫煙は絶対NG
アルコールは血流を促進し、喫煙は血管を収縮させて治癒を遅らせます。
どちらも手術後の回復には悪影響になりますので、少なくとも術後数日間は控えることが必要です。
処方された薬は正しく服用する
鎮痛剤や抗生物質などが処方された場合は、用法・用量を守って確実に服用しましょう。
抗生物質は、途中でやめてしまうと感染リスクが高まる可能性があります。
日常生活の注意点

術後の数日は、手術部位が治癒に向かっている最中です。
この時期に血流が過度に促進されると、痛みや腫れが長引く原因になってしまいます。注意したいポイントは以下の通りです。
お風呂はシャワー中心に
手術当日〜翌日は、湯船につかるのは避け、シャワーのみにしましょう。熱いお湯に浸かると血流が良くなり、痛みや腫れが増す可能性があります。
数日経過して痛みや腫れが落ち着いてから、入浴を再開すると安心です。
激しい運動は控える
激しい運動は血流が良くなり、痛みや腫れが増す可能性があります。
ジョギングや筋トレ、スポーツジムなどでの運動は数日間控えましょう。しばらくは体を休ませることを意識しましょう。
良質な睡眠をしっかり取る
治癒力を高めるためには、十分な睡眠が大切です。
寝る際は、枕をいつもより少し高めにして、頭を心臓よりも高い位置に保つことで、腫れや痛みを防ぎやすくなります。横向きやうつ伏せで寝ると、圧迫によって患部に負担がかかる場合もあるので、なるべく仰向けで静かに眠ることをおすすめします。
口腔ケア方法の注意点

インプラント治療中は、お口の中を清潔に保つことが何より大切です。傷口がある状態で細菌が繁殖すると、インプラント周囲に炎症が起きたり、最悪の場合はインプラント自体が脱落してしまったりすることがあります。
ただし、いつも通りのケアをすれば良いというわけではありません。術後のデリケートな状態に合わせた、やさしいケアが必要になります。
歯ブラシは患部を避けて
手術した部位は敏感なので、数日はブラシを当てる必要はありません。手術部位に触れないように注意しながら、周囲の他の歯は丁寧に磨くようにしましょう。
腫れや痛みが落ち着いてきたら、やわらかめの歯ブラシで徐々に全体を磨いていきます。
磨き始めるタイミングに不安を感じるかもしれませんが、術後は消毒などで通院していただきますので、患部の状態に応じた清掃方法をお伝えしていきますので、ご安心ください。
補助的な清掃器具は徐々に使う
インプラントの清掃には、歯間ブラシやデンタルフロスなどの清掃補助用具を使うのがおすすめです。ただし、インプラントの位置や状態に合わせた正しい使い方が必要です。
無理に使うと、インプラント周囲を傷つけてしまう恐れがありますので、使い始めるタイミングや道具の選び方は、歯科医師や歯科衛生士のアドバイスを受けると安心です。
術後すぐの状態では使わなくて問題ありません。傷口の状態が良くなってきたら、徐々に使っていきましょう。
歯ぎしりへの対応
無意識のうちに行なっている歯ぎしりや食いしばりは、インプラントに強い力をかけてしまう原因になります。
インプラントは天然歯と違って、クッションとなる歯根膜がないため、力をダイレクトに受けてしまいます。歯ぎしりがあるからといって、インプラントができないということはありませんが、術前〜術後まで対策を取る必要があります。
歯ぎしりや食いしばりに心当たりがある方や、歯科医師から指摘されたことがある方は、就寝時にナイトガード(マウスピース)を使って、インプラントを保護していくのが良いでしょう。
食事の注意点
治療後、インプラントを支える骨や歯ぐきがしっかり治るまでの間、無理な咀嚼や刺激を避けることで、インプラントが安定しやすくなります。
ここでは、治療段階ごとの食事の注意点を見ていきましょう。
術後すぐ(当日〜2〜3日)の食事
術後すぐは、痛みや腫れ・出血が起きやすく、まだ傷口も完全には閉じていないため、食事は慎重に行う必要があります。
おすすめなのは、冷たくてやわらかい食べ物です。
食事の例
ゼリー・プリン・ヨーグルト・豆腐・スープ・おかゆ・常温に冷ました煮物 など
刺激が強いもの(辛い・熱い・酸っぱい)や、噛む必要のあるものは避けましょう。噛むときは患部の反対側だけで、ゆっくり食べるのが基本です。
術後数日〜1ヶ月程度
腫れや痛みが引いてきても、インプラントが骨と結合するまでは無理は禁物です。
この時期は「やわらかくても噛みごたえがあるもの」を少しずつ取り入れていくのが良いでしょう。
極端に硬いものや、粘着性のあるものは避けた方が良いでしょう。
避けたほうが良い食品例
- 煎餅やフランスパンなどの硬い食品
- ガム・餅・キャラメルなど粘着性のあるもの
- ナッツ類や繊維質が多い生野菜(繊維が傷口に入りやすいため)
その後は徐々に通常通りの食事にしていきますが、例に挙げたような食品は十分に注意するようにしましょう。完全にインプラントが骨と結合し、上部構造を装着するまでは、極端に硬いものは避けた方が良いでしょう。
まとめ
インプラント治療が成功するかは、歯科医師の技術だけでなく、患者様ご自身の生活習慣やケアによって左右されます。
特に術後の数週間は、インプラントが顎の骨と結合する大切な期間になります。
無理せず体をよく休め、注意事項を守りながら過ごしましょう。
そして、何か異常を感じた場合には、早めに歯科医院に連絡をするようにしてください。
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なぎ歯科クリニック大島 理事長 杉本義樹